彦根、湖南市を除いた県内の１７市町と県が連名で、関西電力に安全協定締結を求める要望書を提出したことを受けて、近江八幡、野洲の両市長は２５日、県に抗議の公文書を送った。県は要望書から近江八幡市を外すことを決めたが、市側の抗議に「大人げない」と批判する市長もおり、県や市町の関係者は混乱を極めた。

　　今回の問題で、一部の市長が主張するように、市町側は９日の自治創造会議で、「（要望書提出には）彦根市の了解を求めたい」との意向を県に伝えた。県も、彦根市との協議や電話を重ね、獅山向洋彦根市長との面会を申し入れたが実現しなかった。

　　要望書の提出先送りも選択できたが、２５日の会見で県の小掠正清防災監は「待っても同じだろうと思った」と吐露。市町に最終の修正文を送り、「全市町に了解を得ていたはず」と手続き上に問題はなかったことへの理解を求めた。

　　湖南、近江八幡、野洲３市は最終締め切りを過ぎてからの「反対表明」。長浜市の藤井勇治市長は２５日の定例会見で、「全市町そろうべきだった。湖南市も大人げない。市民にとって申し入れの不参加は理解しにくいのではないか」と原発の脅威を身近に感じる市民の立場を考慮。その上で「知事も普段から首長と信頼関係を築くことが大切」と注文した。

　　嘉田知事は一部が抜けたことに「影響はない」とし、２６日の日本原子力発電と日本原子力研究開発機構への要望書は、削除を求める以外の市町と県の連名で要望する。

　　「（原発の再稼働同意の権限を得て）自分たちでエネルギーをつくる住民参加型の社会が望ましい」という嘉田知事の思いを込めた要望書は、県内のドタバタぶりに効力を弱めていく。その結果、被害を受けるのは、知事や市町長が守ろうとしている「県民」だ。　（木原育子）

「関電へ要望　原子力安全協定」　　中日新聞/滋賀版　　2011年8月24日

　　　　　　　http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20110824/CK2011082402000111.html?ref=related　

　　県は２４日、県内の市町と連名で、福井県内に原発を運転する関西電力に、再稼働への同意など、福井県並みの権限を盛り込んだ原子力安全協定締結を求める要望書を提出する。彦根市の獅山向洋市長が２３日夕現在、この要望を了承しておらず、１９の全市町と県が足並みをそろえるかは微妙。

　　要望は協定締結や、原発災害時の情報伝達の徹底などを求めている。９日に開かれた県と市町長が協議をする自治創造会議の意見を踏まえて要望書の表現を修正し、嘉田由紀子知事、１９市町長の連名で関電に提出する手はずとなっていた。

　　獅山市長は会議に欠席し「要望書は市町長がおこなった要望書の焼き直しにすぎない」と書面で批判した。

　　このため県は「一人でも多くのメンバーで、何度もメッセージを発信することに意味がある」とし、県防災危機管理局の小椋正清防災監が彦根市に出向き、獅山市長に面会を求めているが、「会ってさえもらえない」（同局）状況という。

　　獅山市長は、高島、長浜、彦根、米原の４市長や県市長会が既に関電などに要望していることを踏まえ「（今回の要望が）４市長や市長会の要望書と同趣旨」「（今回の要望では）公印押なつもしないことから名前を貸す必要はない」との談話を発表した。県は獅山市長の了承が得られなければ、知事と１８市町長の名前で、要望書を提出する。

　　２３日の定例会見で嘉田知事は「彦根市も大気はつながっている。一緒にやろうと明日ギリギリまで調整する」と述べた。

　　県は関電のほか、２６日に福井県内で原発を運転する日本原子力発電、日本原子力研究開発機構に要望書を提出する。

　（木原育子、古根村進然）